「もしかしなくても、拓真は私が死のうとしてるんじゃないかと思ってここまで追いかけてきてくれたんでしょ? 店には辞める事情は話さなかったし。……だって恥ずかしいでしょ、赴任先についていくとか。けっこうきつめの顔立ちをしてる私のキャラって感じでもないじゃん。それに、ただ偶然居合わせただけのあなたも、店長さんも、それからそこの君も、人がいいっていうか、優しいっていうか……。なんとなく雰囲気でわかっちゃうんですよね、心配してもらってる、案じてもらってるって。これじゃあ、ちゃんと幸せにならなきゃ弘人に悪いよ。シガレットケースも香水も、好きだった気持ちも、置いていくことも捨てることもまだまだできそうにないけど、でも私には、こんな私がいいって言ってくれる人ができたし。……うん。そろそろ、思い出に変える準備をしないとね」


 そう、一人ずつと目を合わせ、自分自身に言い聞かせるように。


 どうやら渉たちの気持ちは珠希さんに通じたようだ。昨日からずっと案じていたので、渉はやっとほっとする。


 それと同時に、キュッと身が引き締まる思いがした。