再び野乃が口を開く。


 その声は不思議と、渉の焦燥感も消してくれる。


 固唾を飲んで見守っていると、ふいに相好を崩した珠希さんが困ったように笑った。


「ああもう。みんな好き勝手なことばっかり言っちゃって。要は、私がどう解釈するかの問題なんでしょう? 弘人の気持ちを想像するしかない以上、先へ進むのも、立ち止まり続けるのも私次第なんだよね。……でもきっと、弘人は立ち止まることは許してくれないよ。そういう人だから私は好きになったし、弘人がいなくなってつらいときに支えてくれた担任のことを好きになっていったのも私だもん。やばい、私、モテモテじゃん」


 それから、へへ、と笑って肩を竦める。


 勝手なことを言わないでと声を荒げることも想像していたけれど、そう言った珠希さんの表情は、困っていながらも、どこか吹っ切れたような部分も感じられる。


 すっかり冷めきってしまったエスプレッソを含み、彼女は言う。