同じ人を想っているからこそ気づいてしまった担任の先生の想いは、当時、二十二歳だった弘人さんには脅威に見えたのかもしれない。
先のことを考えるなら、安定した職に就いている人のほうが珠希さんも何かと安心だと踏んだと考えることもできる。
現に珠希さんは、美容師という職を手につけるために頑張っていた。それは彼女が高校生ではなくなってからも見守り続けた担任の先生の力も大きい。
珠希さんが目標に向かって頑張っていることに刺激を受け、自分も好きなことを仕事にしようとたくさん勉強をしてはいても、やはり焦ってしまう部分も多かったのだろうと思うのだ。
そんなときに、まだ道半ばの自分よりも、すでに何歩も先を歩んでいる〝ちゃんとした大人〟が珠希さんに想いを寄せていることに気づいてしまったら……。
渉だったら、何があっても彼女を自分の手元に置いておこうと思える自信がない。
男として情けない限りだが、でも弘人さんの気持ちも、手に取るようにわかる。
「だからか……」
すると、拓真君が嘆息をもらした。
渉たちの視線を受けると、彼は言う。
先のことを考えるなら、安定した職に就いている人のほうが珠希さんも何かと安心だと踏んだと考えることもできる。
現に珠希さんは、美容師という職を手につけるために頑張っていた。それは彼女が高校生ではなくなってからも見守り続けた担任の先生の力も大きい。
珠希さんが目標に向かって頑張っていることに刺激を受け、自分も好きなことを仕事にしようとたくさん勉強をしてはいても、やはり焦ってしまう部分も多かったのだろうと思うのだ。
そんなときに、まだ道半ばの自分よりも、すでに何歩も先を歩んでいる〝ちゃんとした大人〟が珠希さんに想いを寄せていることに気づいてしまったら……。
渉だったら、何があっても彼女を自分の手元に置いておこうと思える自信がない。
男として情けない限りだが、でも弘人さんの気持ちも、手に取るようにわかる。
「だからか……」
すると、拓真君が嘆息をもらした。
渉たちの視線を受けると、彼は言う。