「え。ああ、あったよ。恩師だって紹介したこともあったし。でも、どうしてそれが身を引くことと繋がるの? 確かに弘人は、そのサーフショップではバイトだったけど、ちゃんと将来に向けて道を進んでたよ。身を引くほどのことじゃないんじゃ……」
「いえ。おそらく、珠希さんを想っていればこそです。拓真さんにこぼしていたことは、もうすぐ失恋してしまうだろう自分を想像して言ったものなんじゃないかと仮定することができるんです。……たぶん弘人さんは気づいていたんですよ、担任の先生が珠希さんに教師として以上の気持ちを持っていることに。先生と自分を比べたときに、この人になら珠希さんを任せられるって思ったのかもしれません。珠希さんのことを真剣に想っていたから、珠希さんに苦労をかける道は選べなかったんだと思います」
「そんな……」
野乃の推測に、珠希さんはただただ言葉を失う。
故人の気持ちは残された人たちが想像することしかできないものだけれど、しかし渉にも少しわかってしまう。
不安定な収入では好きな人を幸せにしてやれないという男側の気持ちだ。
「いえ。おそらく、珠希さんを想っていればこそです。拓真さんにこぼしていたことは、もうすぐ失恋してしまうだろう自分を想像して言ったものなんじゃないかと仮定することができるんです。……たぶん弘人さんは気づいていたんですよ、担任の先生が珠希さんに教師として以上の気持ちを持っていることに。先生と自分を比べたときに、この人になら珠希さんを任せられるって思ったのかもしれません。珠希さんのことを真剣に想っていたから、珠希さんに苦労をかける道は選べなかったんだと思います」
「そんな……」
野乃の推測に、珠希さんはただただ言葉を失う。
故人の気持ちは残された人たちが想像することしかできないものだけれど、しかし渉にも少しわかってしまう。
不安定な収入では好きな人を幸せにしてやれないという男側の気持ちだ。