しかし、盛夏も過ぎてそろそろ海に入るのも終わりだという頃、最後にもう一回、と拓真君は渋る弘人さんに頼み込んで一緒に海に入ってもらうことにした。
その日はサーフィンをするには少し波が荒れていて、だから弘人さんは渋ったのだ。
案の定、何度やってもうまくボードの上に立てず、拓真君は楽しくない。そのうちパラパラと雨が落ちてきて、風も出てきた。
でも拓真君はボードに立つまではやめる気はなかったという。毎日のように海に入って気も緩んでいたのだと、拓真君は言った。
「気づくとすぐ近くに高い波が来てました。近くにいた弘人さんが、逃げろって叫んでました。でも俺、急に体が動かなくなって……。気がつくと、病院のベッドの上です。そのすぐあと、弘人さんが俺を助けようとして波に呑まれたってオーナーから聞きました。大丈夫なんですよねって聞いても、オーナーは何も言わないままで……」
だから俺が弘人さんを殺したんです、と拓真君は声を詰まらせる。
「海は楽しいなんて、慢心以外の何ものでもなかったんです。人の命を奪うのも海だってことに弘人さんがいなくなってから初めて気づくなんて、本当に愚かでした……」
その日はサーフィンをするには少し波が荒れていて、だから弘人さんは渋ったのだ。
案の定、何度やってもうまくボードの上に立てず、拓真君は楽しくない。そのうちパラパラと雨が落ちてきて、風も出てきた。
でも拓真君はボードに立つまではやめる気はなかったという。毎日のように海に入って気も緩んでいたのだと、拓真君は言った。
「気づくとすぐ近くに高い波が来てました。近くにいた弘人さんが、逃げろって叫んでました。でも俺、急に体が動かなくなって……。気がつくと、病院のベッドの上です。そのすぐあと、弘人さんが俺を助けようとして波に呑まれたってオーナーから聞きました。大丈夫なんですよねって聞いても、オーナーは何も言わないままで……」
だから俺が弘人さんを殺したんです、と拓真君は声を詰まらせる。
「海は楽しいなんて、慢心以外の何ものでもなかったんです。人の命を奪うのも海だってことに弘人さんがいなくなってから初めて気づくなんて、本当に愚かでした……」