さっきまではゆったりとした時間が流れていた店内は一変して、まだ細く降り続いている外の雨のように、しっとりとした空気に包まれてしまった。


「……あの、三人とも雨に濡れてるし、タオルと、何か温かいものを持ってくるから。とりあえず適当に座って待っていて。拓真君ももう一杯、淹れるから」


 そう言うと、元樹君と目を見合わせた野乃が小さく頷いた。


 肩を震わせて泣く珠希さんは何も言わなかったが、野乃に連れられて席へ向かうところを見ると、このまま店を出ていく気はないようで、渉は内心でほっと胸を撫で下ろす。


 拓真君はなかなか席に戻ろうとしなかったけれど、渉が笑いかけると深く頭を下げ、元の席に座り直した。


 渉はひとまず三枚のタオルを持って野乃たちのもとへ向かう。


 今日の天気は降水確率四十パーセントの曇り空、という予報だった。この程度なら傘はいらないだろうと野乃は持っていかなかったし、見たところ珠希さんも元樹君も傘は持っていなかったようだ。


 弱い雨だが、ある程度の時間、外を歩けば、やはりそれなりに濡れてしまう。空調を切っておいてよかったと渉は思った。大事な人たちに風邪を引かせるわけにはいかない。


「……」


「……」