誠司さんの部屋に戻ると、早速、キッチンに向かい、道具の確認をする。
 まな板、包丁、両手鍋が一つ、ボールは大小ひとつずつ、ざるが一つ、おたま、穴あきおたま、菜箸が見つかった。

 よかった。一応、一通りそろっているようだ。
 道具があるかどうかの確認をすっかり忘れていたことに帰り道で気づき、ひょっとしたら自分の家まで取りに行かないといけないかもしれないと思っていたので、その必要がなくホッとする。

 まずはボールに水を入れて、昆布をつける。
 次に、里芋の皮をむくと、下ゆでをした。
 その間に、人参と大根の皮もむいて、人参は輪切りに、大根はいちょう切りにした。

 里芋に箸を刺すと中が柔らかかったので、ざるにあげて、軽く洗った。竹串があればよかったんだけど、見当たらないから箸で大きな穴も仕方ない。
 鍋があいたので、昆布を水ごと鍋に移し、火をつけた。
 沸騰直前に昆布を取り出し、火を止めてからかつお節を入れた。

 かつお節をこす準備として、ボールとざるを重ね、重大なことに気づく。
 キッチンペーパーがない。
 くずなど細かいかつお節はざるの網を通ってしまうので、キッチンペーパーか綺麗な布巾をざるに敷いてこすほうがいいんだ。

 料理をしない家にある布巾といえば、良くて台拭き、悪くて雑巾だろう。どちらも洗っているとはいえ、料理に使うことには抵抗を感じる。
 そうこうしてる間にかつおが沈んだので、仕方なくざるだけで濾した。

 出汁に残ったかつお節から雑味が出るかもしれないけど、仕方ない。かつお節も具の一部とでも思えばいいだろう。鍋に戻した出汁に人参と大根を入れて、そのまま作ることにした。

 火が通った頃、里芋を追加し再び煮たったら、白味噌をといて入れ、最後に餅を入れた。
 味見をすると、白味噌の味はまろやかで柔らかい。初めての味だけど、わたしも嫌いではないと思う。

「誠司さん、できましたよ」