◆
過去の夢
◆
双子は同じ夢を見た
大好きな幼馴染みの彼が
甲子園で優勝する場面を
慣れたらホームランも簡単なストレートしか投げれない
少年草野球でピッチャーの彼
周りは無理だと笑った
チームメイトさえも
でも双子は信じて疑わなかった
彼なら大丈夫と
彼なら出来ると
チアダンスとトランペットで
どんな場面でも応援した
◆
だけど、双子は事故に遭い
片割れは死んでしまった
何もかもそっくりなもう一人は
事故の衝撃で壊れてしまった
トランペットを仕舞い込み
周りを悲しい気分にさせない様に雰囲気を変えた
周りは心に抱えながらも
思い出さない様にしていた
◆
彼は双子が信じてくれた自分を夢を
現実にしようと人知れず頑張った
高校生になって2年間初戦敗退
だけど3年生最後の夏
彼の高校は危ぶまれながらも
地区大会を勝ち抜き
ついに甲子園の土を踏めることが決定した
◆
現実の夢
◆
甲子園行きが決まった後
双子の片割れ――亜衣(アイ)は
壊れたままのトランペットをこっそり修理に出していた
修理し終わったと連絡が入り
学校帰りに引き取りに行って少し吹いてみる
あれから何年も経っているのに音も変わりなく腕も落ちてはいなかった
懐かしい音色と感覚に安堵して
練習を終え帰ってる途中であろう彼とマネージャーで2つ下の妹
――英智(エイチ)と海衣(ミイ)を
迎えに店を出た
◆
甲子園初戦まで後2週間
英智と海衣は今の練習メニューに不満は無いものの
勝つ為にあと何が出来るか話ながら帰っていた
「あ、亜衣ちゃん~!!」
十字路の少し前まで来た時
前方に亜衣を見つけ海衣は走り出した
「「海衣っ!!」」
亜衣と英智は同時に叫ぶ
亜衣に駆け寄ろうとした時
十字路の横から走ってきた車と
海衣はぶつかりそうになった
◆
ブレーキ音が響きわたる
英智は海衣に手を伸ばす
海衣は車を見るが動けない
亜衣は海衣を突き飛ばす
トランペットのケースが舞う
突き飛ばされ2人は倒れ込む
全てがスローモーションの様だった
◆
「――っ…海衣、大丈夫か?」
「…うん大丈夫………っ!亜衣ちゃんは!?」
倒れている亜衣に駆け寄り声を掛ける海衣だが反応はない
「亜衣ちゃん!ねぇ、亜衣ちゃんってば!目を開けてよ!亜衣ちゃん!」
フラッシュバックする記憶
一度も目を開ける事なく冷たくなった亜衣の双子の片割れ――舞衣(マイ)の事が
救急車のサイレンが遠くに聞こえた――――
◆
現在の夢
◆
あれから1週間―――
幸い命に別状は無かったものの
いまだに亜衣の意識は戻らない
あれだけ熱の入っていた練習に上の空の海衣に
顧問は大会まで部活に出ず病院に通うことを許可した
静かな病室でまだ温かさを保った手を
冷たくならない様に握っていた
授業が終わった後すぐに来て
面会時間が終わるまでずっと
毎日 毎日 握っていた――
◆
「海衣………」
いつも亜衣と海衣だけの病室に
今日はもう一人居る
英智だ
「……ピッチャーとして駄目な俺を亜衣と舞衣は信じてくれた
この大会が最後のチャンスだ
俺は何としても甲子園で優勝したい
夢を…2人の夢を実現したい
だから俺は俺に出来ることを精一杯する
お前もお前にしか出来ないことをやれ」
◆
英智が帰った後
海衣は眠り続ける亜衣の顔と
事情を知った修理屋が直して
音を奏でる事を待ちわびる様に輝くトランペットを見ながら
さっき英智が言った事を思い出していた
「私にしか出来ないこと……」
大会は2日後に迫っていた―――
◆
―――大会当日
雲一つない青空が広がり
英智達を応援している様だった
最終ミーティングをしていると
控え室のドアが開く
「すみません遅れました!」
「「「海衣!」」」
選手達の声が重なる
入ってきたのは海衣だった
◆
「ご心配をお掛けしました!
でももう大丈夫です
私は私にしか出来ないこと……皆を全力でサポートすること
マネージャーとして共に戦います!」
海衣の吹っ切れた様子と笑顔に一同は俄然やる気が出て士気も高まる
「この前はありがと」
「別に……思ってることを言っただけだ」
海衣はお礼を言ったが
英智はぶっきらぼうに答えた
照れた証拠だと分かっていたので態度はスルーした
もう迷わない
夢の実現に向かって突き進むだけ
◆
未来の夢
◆
試合が始まってすでに7回終了
しかしいまだに0-0のまま
相手は強豪ではないものの
変化球も駆使している為
点が取れず苦戦を強いられている
それでも点が入れられてないのは
英智の努力の結晶であるストレートに
相手も苦戦しているからである
◆
努力の結晶といっても全力で投げないと甘く入ってしまう為
英智は5回ぐらいから息が上がっていた
相手もそれを見抜いて粘っている
「はぁ…はぁ…はぁ………
(やべーな…とりあえず点だけは取られない様にしないと)」
体力も限界に近づき
気力だけで投げていた英智に
球場に響く歓声に混じり
懐かしい一つの音が聞こえた
◆
鳴り止む歓声
視線の先には一人の少女
球場いっぱいに響く音
とても とても懐かしい音色
幼き日の信じてくれた夢が蘇る
吹き終わりフェンスに近づく
めいいっぱいの笑顔で叫んだ
「えいちゃんを信じてる!」
遠い記憶の笑顔と重なった――
◆
「亜衣ちゃん~~~!!」
試合が終わり選手出入口で待っていた亜衣に海衣が泣きながら抱き付く
因みに試合結果は0-1で敗退
9回表まで無得点で粘ったものの
最後の最後で甘く入ってしまい
逆転ホームランを打たれてしまった
◆
「えいちゃん」
「!」
海衣の後ろでばつが悪そうに立っている英智に近づき抱き締める
驚く周囲と固まる英智を余所に
あやゆる気持ちを込めて
亜衣はこう言った――――――
「夢をありがとう」
過去の夢
◆
双子は同じ夢を見た
大好きな幼馴染みの彼が
甲子園で優勝する場面を
慣れたらホームランも簡単なストレートしか投げれない
少年草野球でピッチャーの彼
周りは無理だと笑った
チームメイトさえも
でも双子は信じて疑わなかった
彼なら大丈夫と
彼なら出来ると
チアダンスとトランペットで
どんな場面でも応援した
◆
だけど、双子は事故に遭い
片割れは死んでしまった
何もかもそっくりなもう一人は
事故の衝撃で壊れてしまった
トランペットを仕舞い込み
周りを悲しい気分にさせない様に雰囲気を変えた
周りは心に抱えながらも
思い出さない様にしていた
◆
彼は双子が信じてくれた自分を夢を
現実にしようと人知れず頑張った
高校生になって2年間初戦敗退
だけど3年生最後の夏
彼の高校は危ぶまれながらも
地区大会を勝ち抜き
ついに甲子園の土を踏めることが決定した
◆
現実の夢
◆
甲子園行きが決まった後
双子の片割れ――亜衣(アイ)は
壊れたままのトランペットをこっそり修理に出していた
修理し終わったと連絡が入り
学校帰りに引き取りに行って少し吹いてみる
あれから何年も経っているのに音も変わりなく腕も落ちてはいなかった
懐かしい音色と感覚に安堵して
練習を終え帰ってる途中であろう彼とマネージャーで2つ下の妹
――英智(エイチ)と海衣(ミイ)を
迎えに店を出た
◆
甲子園初戦まで後2週間
英智と海衣は今の練習メニューに不満は無いものの
勝つ為にあと何が出来るか話ながら帰っていた
「あ、亜衣ちゃん~!!」
十字路の少し前まで来た時
前方に亜衣を見つけ海衣は走り出した
「「海衣っ!!」」
亜衣と英智は同時に叫ぶ
亜衣に駆け寄ろうとした時
十字路の横から走ってきた車と
海衣はぶつかりそうになった
◆
ブレーキ音が響きわたる
英智は海衣に手を伸ばす
海衣は車を見るが動けない
亜衣は海衣を突き飛ばす
トランペットのケースが舞う
突き飛ばされ2人は倒れ込む
全てがスローモーションの様だった
◆
「――っ…海衣、大丈夫か?」
「…うん大丈夫………っ!亜衣ちゃんは!?」
倒れている亜衣に駆け寄り声を掛ける海衣だが反応はない
「亜衣ちゃん!ねぇ、亜衣ちゃんってば!目を開けてよ!亜衣ちゃん!」
フラッシュバックする記憶
一度も目を開ける事なく冷たくなった亜衣の双子の片割れ――舞衣(マイ)の事が
救急車のサイレンが遠くに聞こえた――――
◆
現在の夢
◆
あれから1週間―――
幸い命に別状は無かったものの
いまだに亜衣の意識は戻らない
あれだけ熱の入っていた練習に上の空の海衣に
顧問は大会まで部活に出ず病院に通うことを許可した
静かな病室でまだ温かさを保った手を
冷たくならない様に握っていた
授業が終わった後すぐに来て
面会時間が終わるまでずっと
毎日 毎日 握っていた――
◆
「海衣………」
いつも亜衣と海衣だけの病室に
今日はもう一人居る
英智だ
「……ピッチャーとして駄目な俺を亜衣と舞衣は信じてくれた
この大会が最後のチャンスだ
俺は何としても甲子園で優勝したい
夢を…2人の夢を実現したい
だから俺は俺に出来ることを精一杯する
お前もお前にしか出来ないことをやれ」
◆
英智が帰った後
海衣は眠り続ける亜衣の顔と
事情を知った修理屋が直して
音を奏でる事を待ちわびる様に輝くトランペットを見ながら
さっき英智が言った事を思い出していた
「私にしか出来ないこと……」
大会は2日後に迫っていた―――
◆
―――大会当日
雲一つない青空が広がり
英智達を応援している様だった
最終ミーティングをしていると
控え室のドアが開く
「すみません遅れました!」
「「「海衣!」」」
選手達の声が重なる
入ってきたのは海衣だった
◆
「ご心配をお掛けしました!
でももう大丈夫です
私は私にしか出来ないこと……皆を全力でサポートすること
マネージャーとして共に戦います!」
海衣の吹っ切れた様子と笑顔に一同は俄然やる気が出て士気も高まる
「この前はありがと」
「別に……思ってることを言っただけだ」
海衣はお礼を言ったが
英智はぶっきらぼうに答えた
照れた証拠だと分かっていたので態度はスルーした
もう迷わない
夢の実現に向かって突き進むだけ
◆
未来の夢
◆
試合が始まってすでに7回終了
しかしいまだに0-0のまま
相手は強豪ではないものの
変化球も駆使している為
点が取れず苦戦を強いられている
それでも点が入れられてないのは
英智の努力の結晶であるストレートに
相手も苦戦しているからである
◆
努力の結晶といっても全力で投げないと甘く入ってしまう為
英智は5回ぐらいから息が上がっていた
相手もそれを見抜いて粘っている
「はぁ…はぁ…はぁ………
(やべーな…とりあえず点だけは取られない様にしないと)」
体力も限界に近づき
気力だけで投げていた英智に
球場に響く歓声に混じり
懐かしい一つの音が聞こえた
◆
鳴り止む歓声
視線の先には一人の少女
球場いっぱいに響く音
とても とても懐かしい音色
幼き日の信じてくれた夢が蘇る
吹き終わりフェンスに近づく
めいいっぱいの笑顔で叫んだ
「えいちゃんを信じてる!」
遠い記憶の笑顔と重なった――
◆
「亜衣ちゃん~~~!!」
試合が終わり選手出入口で待っていた亜衣に海衣が泣きながら抱き付く
因みに試合結果は0-1で敗退
9回表まで無得点で粘ったものの
最後の最後で甘く入ってしまい
逆転ホームランを打たれてしまった
◆
「えいちゃん」
「!」
海衣の後ろでばつが悪そうに立っている英智に近づき抱き締める
驚く周囲と固まる英智を余所に
あやゆる気持ちを込めて
亜衣はこう言った――――――
「夢をありがとう」