「ど、どうした…?口に合わないか?」

美味しい…とてつもなく美味しい。

「…酷いですよ新見さん。」

「え?」

「オムライスって言ったからって何でファミレスなんですか…!

こんなの…美味しいに決まってるじゃないですか…!!」

「…葛城。…やっとお前の本性見られたな。」

「…え?」

「…そうゆう素の方が葛城らしいよ。」

「新見さん…。」

「ずっと心配してたんだ。

葛城はいつもどっか近寄りがたい所があったからさ。」

ズルい…。そんな言葉言わないで下さい…。

「なあ、葛城。もっと俺を頼ってよ。上司なんだからさ。」

「…はい。ありがとうございます。」

「…寂しい時は寂しい。助けて欲しかったらちゃんと言うこと。俺はちゃんと助けるから。

…分かったな?」

「…はい。」

「…じゃあこの話は終わり!」

そしてあたしは新見さんと楽しく晩御飯を食べた。

でもあたしはその時にはもう欲にまみれてた…。

「ふー美味しかったな。」

「あ、ありがとうございました!ご馳走さまでした。」

「おう!まあ、これから頑張れよ新人!じゃあな。あ、この傘使え。俺は走って帰るから。」

そう言って新見さんが駅に向かって歩いていた。

あたしは、帰って行く新見さんの後ろ姿を見つめた。

新見さん…

寂しいって今言ったら一緒にいてくれますか?

その時あたしの中の欲が心を掻き乱してきた。

行かないで…。

そしてあたしは走り、新見さんを後ろから抱き締めた。

「か、葛城何して…。」

「…行かないで下さい。」

「え?」

「お願い今は一緒にいて…。」

雨がやむまでで良い。

だから…。

「葛城俺は…。」

「寂しいんです。」

「え?」

「あたし…新見さんが好きです。」

寂しさは紛らわして欲しい。

でもそれだけじゃない。

あたしは…新見さんが欲しい。

欲しくなった。

「葛城俺は結婚してるんだよ?」

「分かってます!…でも寂しいと言ったら助けるって言ったのは新見さんです。」

「……」

「…だったら、今一緒にいて下さい。」

一晩なんて言わない。

ずっとなんて言わないから。

「…あたしと一緒にいて!」

だから、今だけで良いから。

「…葛城。」

そしてあたしは新見さんにキスをした。

オムライス味のキスを

これがあたしと新見さんの初めてのキスの味だった。

「…葛城。」

そしてあたしと新見さんは身体を重ねた。

ギッ

「んんっ…。」

「…葛城」

「新見さ…。」

絡まる指から熱が伝わる。

指だけじゃない。

身体全身に熱がかかってるみたいに熱い。

「ハア…っ。ハア…っ。」

新見さんはまるであたしを包んでくれるように優しく抱いてくれた。

「んっ…。」

「葛城…。」

触れあう肌と肌に温もりがあって温かく感じた。

ギシギシ

「あっ…!」

「葛城痛いか…?」

「大丈夫です。」

あたしの腟《ナカ》に新見さんのがどんどん奥へと入ってくる。

「ああっ…!」

「…葛城。」

「新見さん」

あたしは行為の最中、何度も新見さんの名前を呼んだ。

呼んでおかないとこの人はどこかへ行ってしまいそうな気がした。

そしてあたしはここから

新見さんと関係を持った。

あたしは自分から罠にハマったんだ
あたしは、これまでの事を思い出していた。

今ももう、あたしは一人ぼっちだ。

でもあたしの身体にはまだ宗太郎さんに抱かれた感覚が残ってる。

側に居なくてもいい…。

温もりさえあれば…。

なんて思っているけど本当は寂しい。

ずっとずっと側に居て欲しい…。

でもそんな事出来ないのも分かってる…。

だからあたしは身体だけの関係でいい。

…なんて自分に言い聞かせてる。

この先あたしはこのままずっと宗太郎さんと曖昧な関係を続けるのだろう。

そして飽きられたらあたしはまた捨てられる。

そしてあたしはまた一人になる。

そう分かってるのは目に見えてる。

あたしだって、ずっとこのままの関係が良くないのも分かってる。

出来ることなら、宗太郎さんを忘れたい。

なのにあたしはまだ蜘蛛糸にかかる蝶のように動けなくなる。

でもこの罠はあたしが自分からハマったんだ…。

その時

ブブ

スマホのバイブが鳴った。

画面を見ると宗太郎さんからだった。

『今日はお疲れ様。明日も宜しくな。おやすみ。』

…多分、宗太郎さんは一貫の業務としてあたしに送ってきたのだろう。

普通の恋愛なら、ここで好きな人からの連絡来たら嬉しい筈。

でもあたしは違う。

こうゆう優しいメールが辛い。

さりげない優しさにあたしはまた繋がりたくなる…。

そんな自分が嫌になる。

不倫なんて世間では絶対反対される事。

現にあたしは既婚者に手を出した。

だから…。

こんなメールを嬉しいだなんて

宗太郎さんを好きになるなんて

ダメなんだ…。

そしてあたしはトークを送った。

『…有り難うございます。宜しくお願い致します。』

そして既読がついたのを確認してから

あたし達はお互いトーク履歴を消した。

不倫をするにはそれなりのリスクとルールがあるからだ。

Bitter

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