それからどうにか最後まで授業を受け、あたしは家に戻ってきていた。


今日は玄関に父親の靴が無く、それを見て安堵している自分がいた。


リビングにいる母親に声をかけてそのまま自室へとむかった。


屋上のみんなに話をしたから、もう1度父親からの手紙を読んでみようと思ったのだ。


引き出しの中に移動させた手紙を取り出し、開いてみる。


そこに書かれた文字も、大きく歪んで見えた。


それを確認した瞬間ため息が漏れた。


「これもダメなんだ……」


そう呟いて椅子にストンッと腰を下ろした。


自分にとって宝物であるこの手紙なら読めるかもしれない。


微かな期待は簡単に打ち砕かれてしまった。


手紙の上に踊る文字はグネグネとダンスしていて本来の原型をとどめていない。


「拝啓、可愛い菜々花ちゃんへ」


それでもあたしは口に出して読み始めた。


目を閉じていても、その文面は蘇ってくる。