子供の頃の宝物はガラクタになってしまった。


けれどただ1つ、変わらない宝物がある。


「お父さんからのラブレター」


あたしは無意識のうちに口に出してそう言っていた。


「え、なにそれ素敵!」


穂香が目を輝かせて言う。


あたしは照れて自分の頬が赤くなるのがわかった。


「小学校低学年の頃、お父さんが手紙をくれたの。あたしのことを思いやってくれてる内容だった」


父からのラブレターは何度も読み返し、完全に暗記していた。


文字が読めなくなったしまった今でも、ちゃんと思い出すことができる。


「辛い事がある度にその手紙を読み直して、元気になってたの」