「そうでもなさそうな反応だろうが!」


あたしの返答を聞いて健太が有馬に突っ込みを入れる。


「健太、菜々花にはあれを教えてあげないの?」


またひとしきり笑った後、穂香がそう言った。


「あれってなに?」


あたしは健太へ向けて聞く。


「あぁ……悲しい時とか苦しい時を乗り越える秘訣があるんだ」


不意に、健太が真面目な表情になったので心臓がドキッとしてしまった。


「秘訣?」


「うん。悲しいと時苦しい時、自分のお気に入りを思い出すんだ」


「お気に入り? 楽しかったこととかじゃなくて?」


「それもいいけど、思い出はどんどん上書きされていくから。それよりも、変わらないお気に入りを思い出すんだ」


変わらない、お気に入り……。


あたしは埃が被った宝箱を思い出していた。