☆☆☆

この日の授業はほとんど頭に入って来なかった。


栞奈たちのことが気になる上、黒板に書かれた文字を読むことができないのだ。


必死に先生の説明を聞いても、それだけで理解するには限度があった。


ノートもほとんど取ることができず、いつの間にか昼休憩の時間になっていた。


あたしは1人トイレに立ち、冷たい水で顔を洗った。


どうして文字を読むことができないんだろう。


書くことはできる。


会話もできる。


だけど、読めないのだ。


「なんで……」


鏡の中の自分に問いかけてみても、返事はない。


濡れて、情けない顔の自分が映るだけだった。