「泣きそうな顔してるんだけど」


美月があたしの我慢に気が付いてそう言った。


「本当だ。自分が悪いくせに、被害者みたいな顔しないでよね」


栞奈があたしを睨みつける。


そんなにあたしのことが嫌いなら、ほっといてくれたらいいのに。


そう思って栞奈を睨み返した。


その途端、龍一があたしの机を蹴り上げていた。


ガンッと大きな音が教室内に響き渡り、クラスメートたちが静まり返る。


「なに睨んでんだよ」


元はと言えば龍一のせいだ。


龍一が告白なんかしてくるから、あたしの立場は一気に落下して行った。


そう思っても、口には出せなかった。


龍一は男だ。


どうしても力ではかなわないから無駄に怒らせてはいけない。


情けないけれど、あたしは黙って俯く事しかできなかったのだった。