見知らぬサラリーマンや見知らぬ主婦。


観察しながら歩いていると、なんだか楽しい。


それぞれの人生があって、それぞれの家庭がある。


その家庭の中にはきっとあたしと似たような境遇の人もいるだろう。


そう思うと、勝手に心の中で頑張れ! と、応援したくなった。


頑張らないといけないのは、あたしなんだけど。


学校の校門近くまで来たとき、前方から見覚えのある生徒がやって来るのが見えた。


「あ、菜々花!」


相手も気が付いて、すぐに駆け寄って来る。


ちょこちょこと子供みたいに走って来るみゆなに、あたしの表情はようやくほころんだ。


「おはようみゆな。穂香も」


「おはよう」


みゆなの後ろからやってきた穂香とも挨拶を交わす。