「私だって気を付けてました!」


そう言い返すお母さんの声。


玄関に立ち尽くしていると、ドタドタと足音が聞こえてきてリビングのドアが開いた。


目を吊り上げ、鬼のような形相をした父親が真っ直ぐにこちらへ向かってくる。


咄嗟に体を反転させていた。


玄関を開けて逃げようとして、ドアノブに手を伸ばす。


しかし、あたしの手がノブを掴む前に父親に左手をつかまれていた。


「早くリビングに入りなさい」


その声は低く、怒っていることが明確に伝わって来た。


あたしはぎくしゃくと振り向いて、頷く。


最近のあたしは早く家に帰って来ていたし、勉強もしていた。


なにも怒られるような事はしていないはずだ。


自分にそう言い聞かせてみても、気持ちは落ち着かなかった。