旧校舎の屋上はいつでも鍵があいている。


壊れたまま直されていないらしい。


そんな話を元先輩から聞いたことがあった。


教室にいることもできず、家に帰ることもできない。


街をふらついていたら、きっと補導されてしまうだろう。


開いたままの屋上なんて、タチの悪い生徒たちのたまり場になってしまっているかもしれない。


そう思いながらも、あたしは屋上へ続くドアを開いた。


「あ……」


開いた瞬間、青空が見えた。


眩しい光に目を細めて屋上へ踏み出す。


土の香りと木々の香りが、風に乗ってやって来る。