当時そんなふうにして手紙を送られた事がなかったあたしは、飛び跳ねんばかりに喜んだ。


手紙の内容を何度も何度も読み直し、1週間ほどで全文暗記してしまったくらいだ。


懐かしい記憶に浸っていた時、再び階下から声が聞こえて来た。


今度は本格的な怒鳴り声になっている。


父親の暴言に顔をしかめ、手紙をゴミ箱へ……。


しかし、それを捨てることはできなかった。


あたしはゴミ箱の頭上へ伸ばした手をゆるゆると戻し、手紙を机の引き出しに入れたのだった。