「普通の教科書じゃん」


そう言ったのは美月だった。


「なに言ってんの? こんなに歪んだ文字じゃ読めないじゃん!」


しらばっくれるつもりだと思い、あたしはそう怒鳴った。


「歪んでる? それって菜々花の性格の事?」


栞奈がそう言うと、教室中に笑い声が溢れた。


あたしは勢いよく教科書を閉じて、席を立った。


もういい。


教科書が使えないんじゃ授業だって受けられない。


そう思い、大股で教室を出た。


栞奈と美月が何か言っているが、あたしはそれを無視して旧校舎へと向かったのだった。