次第にクラスメートたちから囁き声が聞こえ始めて、栞奈からの視線を感じた。


全身から嫌な汗が吹き出し始める。


「は……たく……さん……」


「どうしたんですか枝松さん。大丈夫?」


途中で先生がそう言い、あたしは教科書から顔を上げた。


先生の顔や、教室の風景はしっかりと見ることができた。


いやらしく笑う栞奈の顔さえ、歪んでは見えない。


あたしは棒立ちになったまま、再び教科書に視線を落とす。


そこに書かれている文字は激しくねじれて、もはやどこから読み始めればいいのかもわからない状態だった。


まさか、栞奈たちがあたしの教科書にイタズラをしたんだろうか?


そう思い、栞奈を見る。


栞奈はすでに興味を無くしたように、手鏡の中の自分の顔に夢中になっている。


「すみません、読めません」


あたしは小さな声でそう言って、席に座ったのだった。