「１つ聞きたいんだけどさ。元先輩って誰？」


栞奈の言葉にあたしは驚いて顔を上げた。


次いで、美月へ視線を向ける。


美月はイヤラシイ笑顔を浮かべていた。


また、こいつか……。


人を付き回して、その行動を栞奈に報告しているなんて、まるでストーカーみたいだ。


そんなに栞奈のご機嫌を取りたいか。


「ただの友達」


あたしはそっけなくそう返事をした。


「そうなんだ？　てっきり次の男かと思った」


そう言って大きな笑い声を上げる栞奈。


「何言ってんの、あたしは彼氏なんて――」


『いない』


そう言おうと思ったのに、あたしの言葉はかき消された。