そのお墓を目の前にしても、あまり実感はわいてこなかった。


向井健太。


墓石に掘られた名前にゆるゆると息を吐きだす。


「本当だったんだね」


あたしの隣で穂香が呟くようにそう言った。


「……うん」


あたしはただ頷いた。


本当だった。


健太が10年前に死んでいたというのは、本当だった。


それなのに、つい数時間前まで会話をしていた健太も本物だった。


そして明日の朝になればまた、健太は青空クラスに戻って来ることだろう。


あたしたちのような、教室に居場所にない生徒を心配して、話し相手になってくれるのだろう。