それは今から10年前の青南高校での出来事だったらしい。


当時1年1組に在籍していた向井健太という男子生徒は、女性が大の苦手だった。


女子生徒と会話することはおろか、女性の先生が相手でもまともに顔を見ることができないくらいだった。


しかし健太は成績が良かった。


元々医者になるべく勉強をしてきていたから、青南高校では難なくトップクラスの成績を保つ事が出来ていた。


しかしそれは健太自身の異質さを際立たせる結果となってしまった。


極度の女性嫌いと成績優秀。


それらの反するものは生徒たちの興味を誘い、徐々にイジられる対象になって行った。


それでも最初は健太もそれを受け入れ、楽しんでいた部分があった。


男子生徒たちとの戯れだと考えていたのだ。


でも、そのイジりはイジりだけでは終わらなかった。