偶然、あたしたちの後ろを栞奈と美月の２人が通り過ぎた。


「あれ？　菜々花？」


その声にハッとして勢いよく振り返ると、２人が立ち止まってこちらを見ていた。


「あ……」


完全に油断していたあたしは、口を開けたまま棒立ちになってしまった。


途端に美月が嫌らしく笑う。


「あれぇ？　今日は学校に来てなかったのになんで制服着てるの？　もしかして保健室登校ってやつ？」


わざとらしく、店内に響くような大きな声でそう言う美月。


周囲の視線が一斉にこちらへ向かってくるような、居心地の悪さを感じた。


穂香とみゆなが、あたしの左右の手をそれぞれ握りしめて来た。


「あれ、尾高先輩じゃないですか？　瞬間記憶能力で有名な」


栞奈の視線が穂香へ向かう。


穂香の体が微かに震えたのがわかった。