「姉２人がさ、俺の口にガムテープを貼りながら泣いてたんだ。『ごめんね、健ちゃん』って言いながら。俺ももう子供じゃなかったから、姉２人が両親からどんな風に扱われていたのか分かってたし、俺が受験に成功することで姉２人の立場が余計に狭くなることもわかってた」


健太の言葉がさざ波のように聞こえてきていた。


とても悲しい出来事なのに、どこか穏やかで優しい声。


「結局、翌日の昼頃に母親が気が付いて助けてくれた。試験はとっくの前に終わってたけど、これでよかったんだと思ってホッとしたよ」


「……でもさ、健太にそんなことをしたってバレたら、お姉さんたちはどうなったの？」


その質問に、健太は左右に首を振った。


「言わなかった」


「犯人を黙ってたの？」


「そう。なにかいい嘘が思いつくかと思ったけど、それも思いつかなくて、ただ黙ってた」


「それってさ、健太の立場が悪くならない？」


「仕方ないだろ。俺が親に勘当されたとしても」


健太の言葉にあたしはゆっくりと息を吐きだした。