「最初は猫みたいに可愛がられてたんだ。2人とは年も離れてたしさ。それが成長するにつれてだんだん両親からの差別が浮き彫りになってきて、関係が壊れた」


『関係が壊れた』


その一言にどんな思いが閉じ込められているのだろうか。


健太の抑揚のない口調が、余計に胸に突き刺さる。


「医者になるの……?」


「その予定だった」


健太はそう言って苦笑いを浮かべる。


医者になるためなら、もっといい高校が地元にはある。


でも、この青南高校にいるということは……。


「受験の前日、姉2人に呼び出されたんだ」


「呼び出されたって、どこに?」


「家の倉庫。使わなくなった自転車とか、古い家具が入ってるプレハブ小屋で、窓もないんだ」


健太の言葉にあたしはゴクリと唾を飲み込んだ。