「今日はこれから学校へ行きなさい。ちゃんと教室で授業を受けるのよ」


「え……?」


「当たり前でしょ。逃げてたってなにも変わらないんだから」


そうかもしれない。


だけど、時には逃げることも必要じゃないの?


そう思ったけれど、やっぱりあたしの気持ちは声になってくれなかった。


散々自分の気持ちを伝えて、その度に踏みにじられてきたからだ。


「……学校へは行く」


あたしは外の景色を眺めながらそう言った。


運転席の母親からホッとした雰囲気が伝わって来て、キュッと下唇を噛んだ。


「教室へ行くかどうかは、わからないけど」


母親に聞こえないほどの小さな声で、あたしはようやく自分の気持ちを口に出したのだった。