後天性失読症。


あたしの症状にはそんな病名が付けられた。


ストレスなどで突発的に起こるもので、珍しい病気はないこと。


ちゃんと薬があること。


私生活の改善と薬物療法で、病気は治ること。


病院を出るまでに、それだけのことがわかった。


「よかった……」


とにかくあたしはまた文字を読むことができるようになるのだ。


そのことが嬉しかった。


「早く治して、勉強に追いつかないとね」


車を運転している母親の表情はまだ険しい。


これから家に帰り、夜には父親にあたしの病気を説明しなければならないからだろう。


あたしも、父親になにか言われるかもしれないと思うと、気が重かった。


でも、ストレスが原因だと先生は言ったのだ。


少しくらい配慮してくれるはずだ。