時々流れて来る物騒なニュースで母親の考え方は偏見にまみれてしまっているようだ。


そんなことなら一緒に来てもらわなくてもよかった。


保険証だけくれれば、1人できたのに。


そんな言葉を飲み込んで、診察室へと向かった。


そこに座っていたのはおだやかな表情を浮かべた若い女性のお医者さんだった。


普通の診察室とは少し違って、先生とあたしたちの間に長い机が置かれている。


彼女を見た瞬間、また母親の表情が険しくなった。


「こんな子に見てもらって、本当に大丈夫かしら」


先生に聞こえるほどの声でそう言う母親を無視し、あたしは椅子に座った。


「はじめまして。今日はどうしました?」


あたしは簡単に自分の症状について説明をした。


先生は真剣にあたしの話を聞き、カルテに何かを記入して行く。


「少し待ってくださいね」


先生はそう言うと、デスクの中から1枚の紙をペンを取り出してあたしの前に置いた。