あたしのために、母親の怒りを鎮めようとしてくれている。


「だいたい、担任の先生はどうしてるんですか」


「先生は先生でちゃんと授業を行っています」


そう言う工藤先生は少しだけ視線を外した。


担任を持っている先生が、あたし1人のために裂ける時間は限られている。


充分なケアができなくても、あたしはそれを責める気はなかった。


「教室でイジメがあって、文字が読めなくなったのよね? それってストレスが原因じゃない! 学校側の責任でしょ!?」


母親の金切り声に頭が痛くなって来た。


「やめてよお母さん。他の子たちに聞こえちゃうでしょ」


「なによ菜々花。お母さんは菜々花のために言ってるんじゃないの!」


「あたしのため?」


本気でそう思ってるんだろうか。