カラオケから帰ると、午後8時を過ぎた頃だった。


キッチンからは夕食の匂いが立ち込めていて、すでに両親は食卓に座っている状態だった。


「先に食べたらいいのに」


手を洗ってキッチンへ入ると同時に、あたしはそう言った。


「何時だと思ってる」


腕組みをして椅子に座る父親が、不機嫌そうな声でそう言った。


いいじゃん別に。バイトしてる子なんてもっと遅い時間まで外にいるし」


「お前はバイトもせずに遊んでるだけだろう!」


バンッとテーブルを叩いて怒鳴る父親に、あたしの食欲は一瞬にして消えて行ってしまった。


「そうよ。バイトも部活もしないで遊ぶなら、家に帰って勉強しなさい」


母親は呆れ顔でそう言う。


あたしの食欲はますます減退し、目の前のハンバーグの香りに吐き気がしてきた。