「文字が読めないなんて……。それじゃ勉強ができないじゃない!」


母親の怒鳴り声にビクリと体が跳ねた。


「どうしてそんな大切なことを今までずっと黙ってたの!?」


あたしだって言いたかった。


でも、言う事が怖かった。


甘えるなとか、勉強が嫌だから嘘をついているんだろうとか。


そういう、否定的なことを言われそうで、怖かったから。


「枝松さんは、文字が読めなくても頑張っていました。俺の授業を、誰よりも真剣に聞いていました」


「授業を聞くだけじゃテストの点数は取れませんよね!?」


「確かにそうかもしれません。だけど、今だって頑張って、お母さんに伝えたじゃありませんか」


工藤先生の声は、諭すような言い方だった。