そう言いたかったけれど、なにも言う事はできなかった。


「どうして屋上なんかで授業を受けるの? 教室で受ければいいじゃない」


さも当たり前のことを言う。


それができていたら屋上なんかにはいかないのに。


「お母さん、聞いてほしいことがある」


あたしはそう言い一度工藤先生へ視線を向けた。


工藤先生は変わらない笑顔を浮かべ、頷いた。


工藤先生がそばにいてくれるなら、勇気を出す事が出来る。


「なに?」


「あたし、文字が読めなくなった」


それは突然起こったことだった。


文字が歪み、文章として理解できなくなった。