「どこへ行っていたの? 教室で聞いたら今日は来てないって言われたわよ」


大股に歩いてくる母親に、逃げることもできなかった。


「あ、えっと……」


どう説明すればいいんだろう。


どうすれば怒られずに済むだろう。


そう考えてみても、突然の出来事のせいで頭の中は真っ白だ。


言い訳を考えようとしても、言葉は全く出てこなかった。


「こんにちは、工藤です」


そんな声が後方から聞こえてきて、あたしは振り向いた。


そこにはいつもの笑顔を浮かべた工藤先生が立っている。


「工藤先生……」


「あなたは誰ですか? 3組の担任じゃないわよね?」


母親の声はトゲトゲしく、周囲にいた生徒たちの注目を集めている。


早くここから逃げてしまいたい……。


「ここじゃあれですから、移動をしましょう」


工藤先生がそう言い、あたしたちは中庭へと移動することになったのだった。