☆☆☆

これで前進できる……。


そう思っていたのもつかの間だった。


昼休憩に入った時、あたしはお弁当を持ってきていない事に気が付いたのだ。


今朝は早起きをして頑張って作ってきたのにと、残念な気分で屋上を出た。


片手に財布を持ち、そのまま食堂へと向かう。


その時だった。


「菜々花!?」


ここにいるはずのない人の声が聞こえてきて、あたしは立ち止まった。


周囲を見回して、その人物を見つけた瞬間棒立ちになっていた。


「お母さん……?」


1年3組のクラスの前に、母親が立っていたのだ。


右手にはあたしのお弁当の袋が握られている。


どうやらざわざわ届けに来てくれたようだけれど、それは最悪のタイミングだった。