瞬間記憶能力があるから、勉強だって有利になることは事実だろう。


「でも、それならどうしてこの高校に入学したの?」


あたしは思った疑問をそのまま口にした。


青南高校よりも、もっとレベルの高い高校は沢山ある。


「嫌だったから」


穂香はキッパリとそう言い切った。


「この能力のおかげで入学できたんだろって言われるのが、嫌だったから」


「そんな……」


瞬間記憶能力の持ち主なら、それを使ってもいいはずだ。


それは不正でもなんでもない。


「この能力を持っているとね、嫌な事も忘れる事ができないの。いつまでもいつまでも、その時の光景が思い出されるの」


穂香は青空を見上げてそう言った。


「記憶が残り続けるの?」


そう聞くと、穂香は頷く。


「そう。忘れたくても、忘れられない」