それは聞いたことがあった。


1度見たものを忘れない能力のことだ。


「うそ、すごいじゃん!」


思わず大きな声になってしまい、慌てて周囲を見回した。


周りには誰もいないし、誰も気が付いていないようでホッと胸をなで下ろす。


「最初はね、みんなそういう風に言うの。すごいねとか、羨ましいとか」


そう言い、穂香は視線を下へ向けた。


蟻の行列がせわしなく歩いて行く。


「でも、そう言うのって次第に妬みに変わって行くんだよね」


「え……?」


「テストの時とかさ、『穂香はいいよねぇ、勉強しなくてもいいんだから』って。何度も言われて来た」


その言葉にあたしは頷いた。