☆☆☆

いつも放課後が近づくたびに憂鬱な気分になった。


今日もあの家に帰らなければいけない。


両親が表立ってあたしに何か言ってくることはない。


けれど、受験に失敗してから家の空気は完全に変わっていた。


以前のようなにぎやかさも、穏やかな気持ちも、すぐそばにあるように感じられるのに、手を伸ばしても届かない場所へ行ってしまった。


「今日はどうする~?」


放課後のホームルームが終った直後、栞奈が声をかけて来た。


あたしはその誘いにホッと胸をなで下ろす。


まだ帰らなくていい。


そう思うと気持ちが楽になるのだ。