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やっぱり、教室になんか戻るんじゃなかった。


1時間後。


あたしはそう思って大きくため息を吐き出していた。


扉を一枚隔てた向こう側からはボールを投げる音がひっきりなしに聞こえて来る。


あたしはもう1度、扉に手をかけた。


力を込めて押すが扉はビクともしない。


全体重をかけてみても、それは変わらなかった。


それは、体育の授業が終わって片づけをしていた時のことだった。


『菜々花、そっちの倉庫に片付けてきて』


クラスメートの1人がそう言い、あたしにボールを投げてよこしたのだ。


そのボールは空気が抜けて、使い物にならないものだった。


こうなってしまった道具は一旦体育館の隅にある小さな倉庫へと保管し、再度使うかどうか考えることになっている。