栞奈の隣はすっかり美月にとられてしまったようだ。


少し前まではあそこはあたしの場所で、みんなをからかう側だったのに。


その頃の自分を思い出して、キリリと胃が痛くなった。


人をからかうことが、人を下に見ることがあんなにも楽しかったのに、今のあたしにはその気持ちが全然理解できなくなっていた。


「どうして今日は来たの?」


栞奈がそう聞きながら近づいてくる。


足音が近づくたびに、あたしの呼吸は荒くなっていく。


来ないで。


心の中でそう願うが、栞奈には届かない。


いい獲物を見つけたように、ニタリとした粘っこい笑顔を浮かべている。


あたしはそんな栞奈からすぐに視線を逸らせた。


栞奈や美月を本気で相手にするから辛くなるんだ。


なんでもないように、やり過ごせばいい。