周囲に気を使う事もなく、同調する必要もなく、自分自身を出せる場所だ。


「そういうことだ」


あたしの質問に工藤先生は頷いた。


あたしはゆるゆると口から息を吐きだし、隣に座っているみゆなへ視線を向けた。


みゆなはキュッと口を引き結び、下をむいている。


「今日1日だけだ。明日からはまたここへ来ればいい」


工藤先生の明るい声が、余計に胸を重たくした。


今日1日だけかもしれない。


けれどあたしたちにとってその1日は、とてつもなく長いものになるだろう。


「ほら、立った立った!」


工藤先生はそう言い、あたしたちが座っているビニールシートを強引に片付け始めた。
こうなると立ち上がざるを得ない。


しぶしぶビニールシートから下りて、健太と視線を見交わせた。


健太は眉を寄せ、肩をすくめてみせた。