「次、菜々花の鬼~」


有馬に追いつかれ、背中をタッチされてあたしは立ち止まった。


大きく呼吸を繰り返して周囲を見回す。


みんな、額に汗を滲ませて遊んでいる。


鬼も、そうじゃない子もみんな笑顔で。


それは忘れてしまったように感じていた、幼いころの自分と重なった。


あたしは忘れてなんかない。


沢山の理不尽に囲まれて窮屈な毎日を送っているけれど、あの頃の楽しさを忘れたわけじゃないんだ。


そう思うと、途端に嬉しくなった。


逃げるみんなを捕まえるたびに再び走り出す。


みゆなと穂香がきゃあきゃあ騒ぎながら走って行く。


あたしはめいっぱい手を伸ばして、みんなを捕まえに行く。