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健太が提案した体育の授業内容は鬼ごっこだった。


まるっきり子供な内容に呆れてしまいそうになったけれど、なにもない屋上でできる授業といえばそのくらいなものだった。


この学校で一番青空に近い場所で走り回っていると、自然と笑顔がこぼれていた。


今までの嫌なことや、不安なことが、走るたびに消え去って行くような気分だった。


「次、有馬の鬼~!」


鬼のみゆな有馬にタッチしてそう言った。


「有馬、足早いんだから手加減してよ!」


近くにいた穂香がそう言いながら逃げ出す。


あたしも一緒になって駆け出した。


風が頬に当たって心地いい。


小学生の頃の自分に戻ったような感覚だった。


無心になって遊んだあの頃を思い出すと、怖い事なんてなにもなかった。


勉強も、両親も、友達も。


今よりも、もっとずっと素直で真っ直ぐに受け止めることができていた。