「ここって……屋上でするの?」


あたしは驚いてそう聞き返した。


ここには体育で使うような道具は1つもない。


できることなんて限られてくるはずだった。


「ここをグラウンド変わりにして走り回るんだ。グラウンドよりも空が近くて、気持ちいいんだぞ!」


自信満々にそう言う健太は、以前にもやったことがあるのだろう。


「仕方がないな。確かに、このクラスで体育をすることは滅多にないしな」


工藤先生は苦笑いと共にそう言い、数学のテキストを邪魔にならない場所に置いた。


「みんなも、荷物は端に避けておけよ。健太に蹴られるからな」


工藤先生の言葉に、あたしは慌てて鞄を移動させた。


「着替えは?」


そう聞くと、工藤先生は笑顔で左右に首を振った。


「そのままで大丈夫。ちょっと汗をかくと思うけどな」


そう言われてあたしは制服を見下ろした。