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「なぁんか、体がなまったなぁ」


そう言ったのは健太だった。


「ついさっきまで寝てたからじゃん」


あたしはすかさず突っ込みを入れる。


健太が起きたのはほんの5分前で、もう少しで午後の授業が始まる時間だった。


工藤先生も、もう到着している。


「そっか。なぁ~工藤先生。午後からは体育の授業がいいなぁ」


健太が甘えたような声でそう言った。


「体育? 午後からは数学を教えようと思ってたんだけどなぁ」


工藤先生はそう言い、用意してきたテキストへ視線を落とした。


「数学はいつでもできるだろ。今は体育の時間だって」


健太は駄々っ子のようにそんな事を言っている。


「体育の授業って言っても、どこでするの?」


そう聞くと、健太はニカッと白い歯をのぞかせて笑った。


「ここだよ」


そう言って屋上を指さす。