「うん……」


自分でも驚きだった。


チャイムの音なんて、ちっともきこえてこなかったのだから。


「枝松があまりに真剣に聞いてくれるから、つい全文読んじゃったな」


工藤先生がそう言って苦笑いを浮かべる。


教科書何ページ分になったんだろうか?


途端に申し訳ない気分になった。


「ごめんなさい。ずっと読ませてしまって……」


「いやいいよ。授業をするのは俺の仕事だからな」


工藤先生はそう言い、ようやく国語の教科書を閉じた。


「菜々花は授業を受けるのが好きなんだなぁ」


健太にそう言われて、あたしは曖昧に頷いた。


「まぁ、嫌いじゃないかな……?」


最近では両親に文句を言われないように頑張るだけになっていた。


でも、子供の頃から勉強が嫌いというワケではなかったのは、確かだった。