自分でもビックリするくらい、緊張していなかった。


「文字が読めない?」


「はい。何日か前からか、急に読めなくなったんです。文章が歪んで見えて、1つ1つを読んでも、意味として頭に入ってこないんです」


あたしがそう言うと、工藤先生と健太は真剣な表情になった。


「病院には?」


そう聞いて来たのは健太だった。


あたしは左右に首を振る。


文字が読めない事を両親に言ったら、どんなことを言われるかわからない。


だから、病院へ行くこともできずにいた。


「それなら、教科書の内容は俺が読もう」


気を取り直すように工藤先生はそう言い、教科書を持った。


「2人は俺の言葉を聞いて想像力を働かせるんだ。そして答えを導き出す。いいか?」


そう言われて、あたしと健太はうなづいた。