工藤先生の視線を感じて、緊張で背中に汗が流れて行った、その時だった。


隣の健太が大きなクシャミを1つしたのだ。


空中へ響くような音にビックリして目を見開き、同時に笑みがこぼれていた。


「すごいクシャミだな」


工藤先生が呆れながら言う。


「花粉症なんですよ」


そう言って鼻水をすすりあげる健太。


その様子が子供みたいでおかしくて、声を出して笑った。


「花粉の季節は終わってるだろ」


「工藤先生知らないんですか? 花粉症には色々な種類があって、年中気が抜けないんですよ」


健太は必死に力説している。


「あのあたし……文字が読めないんです」


笑いが治まってから、あたしは自然とそう言えていた。