だけど、教科書を読むことができないから、出せないのだ。


「なんでそんな嘘つくんだよ」


そう言ったのは健太だった。


あたしの隣で不思議そうな表情を浮かべている。


「う、嘘なんかじゃないし!」


「でもさっき筆箱を取り出すときに国語の教科書が見えたぞ?」


うっ……。


どうしてそういう所だけしっかり見てるのかな……。


「何か、理由がある?」


工藤先生があたしの前にしゃがみ込んでそう聞いて来た。


ちゃんと説明するべきだ。


そう思うのに、声が喉に張り付いていた。


教科書を読むことができなかったとき、クラスメートたちに笑われた。


あの光景を思い出してしまう。