工藤先生が行う授業はほとんどがプリント問題だった。


工藤先生自身、全科目が得意なワケじゃないから、授業も限られてくる。


それでも、教室の外にいるというだけで勉強に集中できる気がした。


あたしと健太はビニールシートに座り、先生の授業を受ける形になった。


「じゃあ、まずは国語の教科書を開いて」


工藤先生にそう言われて、あたしの手が止まった。


「どうした松枝」


工藤先生がジッとあたしを見つめている。


「あの……あたしも、健太と同じで教科書を忘れました」


あたしは苦し紛れにそう言った。


なんと、健太は全科目の教科書やノート、果ては筆記用具を持ってきていないのだ。


「本当に?」


「ほ、本当です」


そう言って自分の学生鞄を隠した。


本当は持って来ている。